知恵通信

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2011.05.27

中国日系企業成功の秘訣 9
中国での人事・労務管理 その① 「期限の定めのない労働契約」

人事顧問 佐藤忠幸

今月号からは、実践的な人事・労務管理について勉強します。今号は、「期限の定めのない労働契約」すなわち無期限労働契約について学びます。

10年勤続者は期限の定めのない労働契約

2008年に施行された労働契約法では、3回目の契約更新をする場合は「期限の定めのない労働契約をする権利が労働者にある」ということがずいぶんと話題となりました。

しかし、さらに労働契約法および労働法では、「労働者が同一の使用者のもとで連続して満10年以上勤務し、当事者双方が労働契約を延長することに合意した場合において、労働者が申し出たときは、期間の定めがない労働契約を締結しなければならない」とも規定されています。

両方とも、いわゆる無期限契約です。日系企業も創業10年を経た会社が続々と出てきました。また、中国に進出して間もなくても、古い企業を買収した場合も、これが適用されますから意外に該当企業が多いようです。

正当な理由なき契約中止は困難

無期限契約となった場合、定年など特殊事情がない限りは契約終了がないわけで、会社側の意思で契約中止したくてもなかなかできません。金銭的には経済補償金の他にも賠償金を要求される可能性すらあります。ましてや、契約中止無効の訴えを出されたらほとんどが企業の負けです。

このことを多くの経営者がご心配のようです。中には、10年勤続直前に解雇し再雇用、あるいは派遣社員へ切り替えなど姑息な手段で逃げようとする企業もありますが、いずれも雇用実態で判断されて無効となります。むしろ無用な労働争議を起こされるだけマイナスです。

永年勤続者は困ることか

しかし、無期限契約になる社員すなわち永年勤続者が、模範的優秀幹部、模範的優秀技術者、模範的優秀技能者、・・・・等々、全てが模範的優秀な社員ばかりであれば、これは歓迎すべきことでしょう。会社の将来は保証されたと同じではありませんか?

中国に赴任したばかりの多くの日本人は、「中国人はすぐに辞めて困る、日本のような長期雇用は根付かないかなー」と嘆いていたことを思い出していただきたい。

永年勤続者を、企業にとってかけがいのない者ばかりにするには

中国では、人事考課をする機会が年3回もあります。すなわち、昇級・昇給査定、賞与査定、そして、契約更新査定です。これを手抜きせず、信賞必罰をきちんとしている限りは、10年勤続者が優秀でないはずはありません。優秀でない者は、10年勤続の前に契約終了か自主退職でいなくなっているはずです。

最低賃金の高騰、賃金集団交渉の審議、その他で、今や中国は、「豊富で安い労働力の活用」という意味での「世界の工場」ではなくなりつつあります。

中国で、儲かる企業として生き残るには、優秀な技術者と技能者をそろえ、優秀な管理者によりそれをしっかり管理した、先進国に負けない品質と高度な生産技術の企業に脱皮しなければなりません。

「安かろう、悪かろう」の製品は、既に中国内でも淘汰されつつあります。しかし、まだマイナーな中国製品のイメージでは「安かろう、良かろう」でなければ売れませんね。日本以上に管理が難しい所以です。年3回の人事考課を、確かに行なっているのか振り返ってください。

人事考課は組織のピラミッドづくり

人事考課を好い加減に行なっている企業には、活力がありません。

なぜなら、がんばっても、手抜きしても、たいして差がつかない、或いは、大部分の者が中間査定では張り合いが出ないため、優秀な者から退職されてしまいます。ダメな者、無気力者ばかり残り活力がなくなります。そのような企業は、ダメ人間の無期限契約者を大量に抱え込むこととなり、とんでもないことになりかねませんね。

ダメ人間は、積極的に毎年ふるい落とし、さらに、優秀な者は抜擢し、組織の、もっと云えば同一職種同一資格者の中でピラミッドを毎年つくっていってください。長年の積み重ねで、そのピラミッドの精度は高まり、高度差(実力差)が厳しく表れるようになることでしょう。

無期限契約者も減給できる仕組みを

無期限契約者は、契約終了の心配がなくなることから怠惰に陥るとの声も聞きます。

しかし、無期限契約となっても年2回(昇級・昇給と賞与)の人事考課を手抜きせずに行なっていればその心配は杞憂でしょう。

彼らには強い誇りがあります。降格・降級・降給を喜ぶはずがありません。部課長が平社員に落とされれば、ほとんど辞めます。

前記のように、「期限の定めのない労働契約」であっても人事考課が悪ければ減給できます。問題は、それができる労働契約書であるかどうかです。労働契約書に賃金を記載することは当然です。したがって「賃金は毎年何月に見直す、減給もあり得る」ということが書かれていなければ減給は難しいでしょう。同時に、資格、職位、職務の変更もできるように記載が必要です。

そして、人事・賃金規定でその根拠を明示しなければできません。

中国では、人事管理の手抜きは厳禁です。

人事のことを知らない人事部長に「放任」している企業には、明日がないことは明白です。

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