知恵通信

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2012.06.26

中国日系企業成功の秘訣 10
中国での人事・労務管理 その② 「放任のつけ」

人事顧問 佐藤忠幸

企業の3大資源、あるいは生産の3要素は「ヒト・モノ・カネ」といわれています。人事管理同様に重要な位置づけに財務管理があります。振返って、総経理および管理者の認識について学びます。

事例 放任のつけ

蘇州郊外のS社は10年ほど前に日本側90%出資と地元有力者10%出資の合弁会社を設立した。当時は工業団地がなく、地元有力者の協力なくして農地転換等ができなかったからである。董事(役員)と副総経理(副社長)各1名を地元有力者から出すことも決まった。副総経理は地元有力者の一族。日本側から出す総経理(社長)は、人事及び財務面に弱いので地元の副総経理が管理することが決まった。

総経理は、管理の全てを副総経理に任せてしまった。結果は、何時の間にか利権に絡む部門の責任者全てが副総経理一族・一派に占められた。

副総経理の親族は、S社と同業のT社を作り、S社の設備・備品を休日に持出し、S社監督者もT社で休日に労働させていた。社員食堂担当者は、材料費のバックマージンを受け、材料を水増し発注し余剰材を転売して儲けていた。それらを、取り締まるべき警備員も一族であり、わざと見逃していた。

管理面に弱い日本人総経理よりも、人事と財務を握る副総経理が実質的な老板(ラオパン=ボス)となってしまい、良識派幹部は全て退職した。副総経理の存在を脅かしそうな者は一切採用せず、親会社が直接採用して送り込んだ幹部も徹底的ないじめで辞めさせてしまった。

副総経理を辞めさせたくても、会社定款で「高級幹部の任免は、役員全員の承認が必要」となっているためできない。地元有力者の株を買い取りたくても、高額を吹っ掛けられて買えず、その間にS社は腐りに腐った。

幹部は苦手をつくるな!克服せよ!

日系企業の多くは、総経理はじめ高級幹部には日本から管理者を送り込みます。会社経営経験はないか少ない方が大部分です。しかも、製造あるいは技術系か営業の管理経験のみで、人事や財務畑出身者は稀です。だから駄目とは言いません。問題は、自分の欠けている部分を認識し補うための学習をしているか、克服する努力をしているかです。

中国では、会社に属するよりも「老板(ラオパン)」に属する

中国では、組織に対する忠誠心は希薄。信頼できるのは一族郎党あるいは親分子分という身の回りの存在だけです。

当地では会社に対する帰属意識が薄いため、ピラミッド的組織を作ることが困難であることはご存知でしょう。むしろ親分子分の関係で組織が成り立ち、その親分(老板)への信頼関係で全てが決まります。信頼関係の評価基準は、親分への忠誠度、それに対する見返り利益です。企業であれば、評価と昇給・賞与、それと、よい仕事の機会をもらうことです。

エコヒイキをして、特定の者ばかりに利益を与えていれば、その老板組織は局部的なものにしかなりません。大組織なら、機会均等・公平公正でなければ老板として尊敬されず、組織は当然分裂崩壊します。人事制度の重要性がここにあります。

「事例」は、総経理が老板でなく、異なる者が老板となった悲劇です。

任せろ、しかし放任するな!

人事や財務の責任者は中国人とする企業が大半です。いろいろな関係および現地化のため、それらは必要なことですが、総経理および日本人管理者がそこにどこまで関心をもっているか、どの程度チェックしているかが問題です。財務でいえば、決算書・原価計算書などの財務諸表および出金伝票の承認段階で「めくらサイン」しないことが重要です。どこに金があり、どこに財産がある、どこに不正があるか見抜ける眼力を養っていただきたい。人事面では、採用と制度運用を放っておけば何時の間にか、不正仲間か不正を許す者ばかりを幹部の中枢に据えられてしまい、会社は悪の棲家となり、悪に食い放題にされます。「事例」はその典型です。

「ヒト・モノ・カネ」の内2つまでを放任するのは経営放棄であり背信行為です。

苦手な分野でも関心をもち、努力をすれば必ず克服できます。

日本にいたのではできないチャンスと捉え、努力し学んでいただきたい。

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