知恵通信

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2012.06.26

中国日系企業成功の秘訣 11
中国での人事・労務管理 その③ 「中国人は直ぐ辞める?」

人事顧問 佐藤忠幸

「中国人はすぐ辞める」という日本的思考

中国では、やっと採用し、一人前になったとたんに辞められたという話をよく聞きます。人事責任者にとっては頭が痛い話ですが、確かに日本に比べるとよく辞めます。しかし、世界的に考えてそれは異常なことでしょうか、もう一度考え直す必要があります。

「長期安定雇用」を至上に考える日本人の習慣を基に考えていませんか?

日本でも、会社に入社すると雇用契約を結ぶようにはなってきましたが、いつでも雇用を打ち切られたりしてその効力は極めてあいまいな日本しか通用しない契約です。最近でこそ年功序列、終身雇用は減ってきましたが「長期安定雇用」が日本の大部分の制度の前提となっていることは相変わらずです。それは、日本だけの例外と認識し、中国に進出したら中国としての雇用形態と雇用習慣を前提に人事政策を考えなければなりません。

中国では、雇用契約ではなく、労働契約です。

すなわち、雇用する、雇用されるという関係ではなく、これから労働する関係を結ぶかどうかの対等な契約です。

労働契約満了で、継続勤務するかどうかは労働者の権利であり、継続勤務してくれないのは会社が継続勤務する価値評価に不合格だったと認識すべきです。

合格すべき会社にする努力を怠ったことを反省し、辞める者に責任転嫁してはいけません。

入社・退職は契約開始・終了

中国では、少なくとも契約上では入社・退職・解雇という概念がありません。労働契約の開始・終了・中止・解除です。

したがって、退職金制度もありません。それに近いものとして経済補償金制度があるだけです。それも日本での解雇(会社都合による解雇・依願退職・解雇・懲戒解雇)に相当する、契約の中止・解除の2種類について支給するだけです。(懲戒解雇に相当する契約解除の場合は支給しない)

辞める理由は「会社がいや」というより「ジョブホッピング」

会社を辞める者は、何も会社がいやになった、仕事がいやになった、というだけではありません。自分のステップアップのために、好きな会社、好きな仕事までを放り出して転職する者の方が多いのは事実です。大学を卒業して、日系企業で学び箔をつけてから、欧米系企業で管理職と高給を目指すという事例も数多くあります。(何故欧米系企業に行くのかは別途学びます)

しかし、入社当初はそのつもりではなかったはずです。日系企業に夢と希望をもって入社したのにその夢が破れただけです。日系企業の多くは新卒者が幹部になるには(彼らにとっては)長すぎ、必要以上に経験を重視されます。給与も同じことで、勤続に対するウエイトが高すぎます。実力本位の欧米系企業に流れることは当然です。「入社したばかりで高給を望むなんて」、「まだ経験が○年しかないのに」、という理由は中国人には通用しません。

このような事例は「ジョブホッピング」といわれごく自然なことであり、中国だけの現象ではありません。なお、このジョブホッピングは、平社員から中堅社員へ、中堅社員から中堅幹部へ、中堅幹部から高級幹部へと3ステップが多いようです。ジョブホッピングの都度狙う昇給は、それまで抑えられていたものを取り返すため、1ステップごとに50~100%アップです。

これに対応できない企業は、職業訓練所となってしまいます。

企業としてこれを避けるためには、社内ジョブホッピング制度(抜擢制度)を作ることです。もちろん、自信過剰でこれを繰り返す者もいますが、そういう者には早く辞めてもらって結構です。早く新人に入れ替わった方が健全です。

抜擢があれば、格下げも必要

抜擢するということは、責任の重い仕事を任せ、それに見合う大幅昇給をするということです。

昇給だけでは、会社としては労務費の増大になります。社員から見れば、抜擢されても昇給がそれに伴わなければ意味がありません。さらに、仕事ができないあるいは能力のない同僚と大幅に差がついて、初めて抜擢されたという優越感・満足感を得られるはずです。

したがって、抜擢したらそれに見合う逆の者には、格下げや降給が重要です。それをされた者の多くは辞表を出すでしょう。長い目で見れば、それも企業体質強化につながるはずです。勇気をもってやってください。

しかし、格下げや降給につながった人事考課の合理性・納得性、そして人事考課と給与の関係が、労働契約書や諸規則で明確でなければ訴えられたときに負けます。人事・給与制度が重要な所以です。

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